わたしを離さないで


FIGAROで紹介されているのを見てから狙っていた本。
カズオ イシグロさんの本は初めて読みました。


わたしを離さないで

わたしを離さないで


「提供者」として宿命づけられた人びとの記憶。
ラストに向かうにつれて
予感は確信に 哀しみはいよいよ深く 希望はかすかに儚くなっていく。


実はものすごいことを書いているのに
この本の世界には、なぜか透明なヴェールのようなものがかかっていて
わりと淡々と読み進んでしまうのです。
掴めそうでつかめなくて リアルなようで現実感がなくて。


けれど後から、少しずつ 少しずつ 重くなる。
読んでいる途中より 読み終わった直後より 今、一番心にずしーんとくる。
フィクションなのに、なんだか自分の生にも罪悪感を覚えてしまう。
この本の世界にあることは、きっと誰もが許されないと感じるでしょう。
けれど、じゃあ一体どこまでが許されるのか?という問いと対峙したとき
わたしは困り果ててしまいました。


二度読みたくはないけれど、読む価値はある本です。


この本の世界にヴェールを感じるのは、
静かで淡々とした語り口のせいもあるけれど、
日常の回想のわりに食べ物を食べているシーンがないからかな、
とフト思ったりしました。